お焼香

行雲流水こううんりゅうすい…雲のように、水のように。仏さまになりきって。

 曹洞宗そうとうしゅうの作法をご案内します。仏教は原理主義ではないので、「間違ったらダメ」ではありませんが、「心を込めれば良い」と作法をないがしろにすると、いざとなったら慌ててしまって心が込められません。作法はつまり「スマートに気持ちを表す方法」なので大切にしていただければと思います。

作法

一、香炉こうろの正面に至って、両手を合わせて礼拝らいはいする。

二、右手(親指・人差し指・中指)でお香を取り、左手を添えてひたいの前にゆっくりといただく。そして、お香を炭の上にく。(左手はこの時、片手で合掌がっしょうの形をとるのが良い。)

三、(左手は片手合掌がっしょうをしたまま)再び右手でお香を少し取り、今度は直接、炭の上にく。

四、両手を合わせて礼拝らいはいする(合掌のまま頭を下げて上げる)

 一度目にくお香を「主香しゅこう」、二度目にくお香を「従香じゅうこう」と呼びます。一度目にいた「主香しゅこう」が消えないようにと「従香じゅうこう」を添えます。ですから「従香じゅうこう」は「主香しゅこう」よりも少なめで、何人も連なってお焼香される時などは省略しても構いません。

 お焼香は、途切れない様に行う事が大切です。

 僧侶が連なってお焼香する場合、「前の人が横にずれて最後の礼拝らいはい」をして、それと同時に「次の人が前に進んで最初の礼拝らいはい」をします。こうして次々とお焼香します。

 僧侶の作法を基本としますと、在家ざいけの方であれば、「前の方が席に戻ってから次の方が席を立つ」ではあまりに間延びしますので、次にお焼香される方は、前にお焼香される方の数歩後ろで待つ様にして下さい。

 また、お焼香の前後に、「お香を拝借します。」や「お焼香させて頂きます。」の意味を込めて、お導師どうしさまやお施主せしゅさまにお辞儀をする場合もありますが、前の方がお焼香をされている間にお辞儀をして下さい。

 多くの方がお焼香をされる場合、「前の方が終わりのお辞儀をして…次の方が始めのお辞儀をして…」では時間ばかり掛かります。お身内だけのご法事などでは、お辞儀をされなくても構わないと思います。

 お数珠じゅずをお持ちの場合、左手首に掛けるか、左手の中指に掛けて下さい。

 最近はあまり見かけませんが、「お香を拝借します。」の意味で、幾らかの硬貨(焼香銭しょうこうせん)をお香の入れ物の横に置く習慣もあります。

 とにかく、始めに示した四つの作法を、真心を込めて丁寧にして下さい。それ以外に気を取られて、肝心の「お焼香」を慌てたままのお気持ちでしてしまっては、本来ではありません。

 仏教は原理主義ではいけないので、「間違ったら何が何でもダメ」ではありませんが、作法はつまり「スマートに気持ちを表す方法」なので、大切にして頂ければと思います。