お仏膳
行住坐臥…仏さまの生活を送る。今ここにある修行。
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はじめに
お仏壇にお供えするお仏膳は、お檀家さんによって様々です。
「故人さまがお好きだったものを並べておられるんだろうなぁ。」「きっと故人さまから教わったお料理を作られたんだろうなぁ。」「慣れない料理を一生懸命されたんだろうなぁ。」と真心を感じると温かな気持ちになり、読経させて頂く私も気が引き締まります。
あるお檀家さんのお仏壇の開眼へ伺いましたら、お仏膳は初めてご用意された筈なのに、お箸が正しい向き(仏さまから見てお箸の先が右側)に置いてありました。「よく御存じでしたね?」と尋ねましたら、「いいえ、知りませんでした。故人が左利きでしたから。」とお答え下さいました。
お仏膳は、ご家族の思いが表れます。お仏膳そのものより、何よりも故人さまを思うご家族のお気持ち、感謝の心が大切であります。
お仏膳は必要?
お仏膳は「用意しなければならないもの」ではなくて、「仏さまやご先祖様に、是非ご用意させて頂きたいもの」であるべきです。
お仏膳は、「私たちが暮らし、ご飯を食べられるのは、仏さまやご先祖さまのお蔭です。」と感謝の気持ちを精いっぱい表すためにお供えするものです。
ご用意出来ない場合もあるでしょうから、「必ずご用意して下さい。」とは申せません。皆さまご自身のお考えにお任せしております。
お仏膳がご用意出来なくても他の方法で、仏さまやご先祖さまへ感謝やご接待のお気持ちを表して頂ければと思います。
漆塗りのお仏膳は必要?
前述のような考えに立てば、必ずしも仏具店で売っているような、漆塗りのお仏膳でなくても構わないと思います。ただご法事のときなどは、漆塗りのお膳がお供えし易くて便利だと思います。
いずれにせよ、綺麗な器、大切な器に、お心を込めたお料理を盛り付けて頂ければと思います。
お膳の数
それぞれの仏さまに一膳ずつご用意させて頂くのが本来ですが、さすがにご家庭のお仏壇には並べ切れません。
ご家庭のお仏壇にお供えする場合、お釈迦さまをはじめとした「仏さま」用の大きいお膳、「ご先祖さま」用の小さいお膳(同じ大きさのお膳でも結構です)の二膳、これが一般的だと思います。
お仏壇の大きさによって、一膳しか並べられない場合、その一膳に二膳分のお気持ちを込めて頂ければと思います。
いつお供えする?
「私たちがご飯を食べられるのは、仏さまやご先祖さまのお蔭」と感謝することが目的ですから、私たちがご飯を食べるようにお供えするのが本来であります。
しかし、これも毎日、毎食ではご負担が大きいですから、日常の出来る限り、続けられる範囲でお供えして頂ければと思います。
例えば朝でしたら、「おはようございます。」の意味を込めて、お茶やお水、ご飯をお供えして頂ければと思います。
毎朝ご飯を炊くご家庭も少なくなってきましたから、ご飯を炊いたときは、真っ先にお仏壇にお供えして頂けたらと思います。お家によっては、コーヒーや紅茶、パンをお供えして頂いても構いません。
おやつがケーキでしたら、まずお供えしてから食べて頂いたり、ご夕食であれば、おかずを小皿に分けて、たとえ一品でもお供えして頂ければと思います。
お茶やお水など飲み物は、一日お供えして頂ければと思います。
ご飯やおかずなどは、暑いときは傷むのが早いので、皆さまご自身が食べる前にお仏壇へお供えして頂いて、(お線香を立てて)手を合わせて頂いて(あるいは読経して)、すぐにお下がりを食べて頂ければと思います。
いつお供えしなければならない、また逆にお供えしてはいけない時はありません。「正式でなければならない。」と構えてしまわずに、日常の出来る限り、続けられる範囲でお供えして下さい。
そして毎月のご命日、毎年のご命日、お盆、ご法事のときは精いっぱいのお仏膳をご用意して頂ければと思います。
何をお供えする?
前述のように皆さんが食べるものを皆さまが食べる前にお供えして頂ければと思いますが、厳密に言えば、お仏膳は当然に精進料理でありますから、お肉やお魚、卵、ネギなどは使えません。忘れがちですが、お魚のお出汁も使えません。
現在において守ることは難しいので、ネギや玉ネギなどのお野菜、お魚のお出汁はお使い頂いて、お肉やお魚をお供えする場合は、お仏壇の中には入れず、前机などにお供えして頂ければと思います。
お仏膳
以下にいわゆる「お仏膳」に何をお供えすれば良いかをご紹介します。
・飯椀…白飯もしくは炊き込みご飯。お仏壇の開眼など祝事はお赤飯。
・汁椀…お味噌汁もしくはお吸い物。
・平皿…お野菜の煮物。品目は五種と言われますが、こだわらなくても構いません。
・壺椀…和え物もしくはお浸し、酢の物。
・高坏…酢の物もしくはお漬物。
・お箸…お箸の向きは諸説あるようです。僧侶は、ご飯を戴く前にお箸の先が右側にくるように並べ、食べ終わったら逆向きに置いています。また、故人さまが食べられませんので、必ず箸を割って並べて下さい。
・蓋……蓋があっては仏さまも食べられませんから、取っておいて頂くか、読経する前には外してください。 始めから使わずに、しまっておいても構いません。